トラブル・ストラグル
 
 
  ステキ効能のある温泉求めての珍道中。神父と従僕二人組はライバル達を花札を用いてちぎっては投げ、ちぎっては投げてどんどんと蹴散らしていった。何故花札勝負なんだ、なんてツッコミは存在概念を失ってしまうためトラぶる道中真っ只中の彼らに行ってはいけない。
 その行程の半ば――予想外といえば予想外の人物が彼らを出迎えた。

「ふっ、ここから先に進みたければ、この僕を倒してからいくんだね」
「しょーぶー!」

 ワカメヘアの少年と、無邪気に鬨の声を上げる
 立ちふさがる謎コンビに、とりあえずサーヴァントは己が主らに問い掛けた。

「おい、これはどういうワケなんだ? 接点がまるで見えねェぞ」
「…とりあえず、何故そやつなぞと組んでいるのかわかりやすく説明せよ」
「だって三人で先にチーム組んじゃってるでしょう? わたしもお留守番だけじゃなくって仲間に入りたかったの」
「だからって何で――」
「慎二おにいちゃんから一緒に組もうって誘われたの。お互い一人だから、丁度いいよねって」

 ねー? と、小首をかしげるように傍らの少年には語りかける。慎二はどこか得意げにそれを肯定した。

「まあね。別に僕一人でもよかったんだけど…まあ、子供一人くらいならハンデにもならないし」
「ふむ、随分と余裕なのだな」
「だったら嬢ちゃん、今からでも遅くない。オレと組もう」
「まて、この我を差し置いてそのような身勝手は許されんぞ」

 あいもかわらず茫洋とした受け答えをする神父を尻目に、残りの二人のテンションは妙に高い。
 我先にとばかりに一歩踏み出そうとした槍兵の肩を、ギルガメッシュがぐいと引き留める。
 バチバチと火花が飛び散る中、ランサーが魂から搾り出したかのような声音で叫んだ。

「オレはこんな癒し要素ゼロの男臭いチームよりも、潤いのあるコンビを組みたいんだよ!
 ホレ、間桐の兄ちゃんオレと替われ。UBWルートチームって事でイイだろ」
「黙れ雑兵。それこそお前が残って『神父と愉快な下僕ども』でチームを続行すればいいだけではないか。と組むのは我だ」
「よーし、よく言った。テメエのハツ貰い受ける」
「ハッ、戯言を。貴様こそ覚悟を決めろ。我のドリルで粉微塵にしてくれるわ」

 それぞれで啖呵を切り合い、己が獲物を展開させようとする――が、とらブル結界発生中のこの場においてはあまり意味をなしていなかった。相手の役札を串刺して奪ったり、無駄に開闢の星を展開したはいいがこいこいをうっかりしてしまって場を流してしまったりと、あくまで花札の概念に囚われ続けている。そんな絶望的にどうしようもないほどグダグダなやり取りを神父は生温かい目で見守っていた。サーヴァントが繰り広げる、無駄に迫力のある限りなく無駄な諍いを実に楽しげに見つめている。

「……おまえ、いつもこんな連中の相手してるのか?」
「うん。だからいつも楽しいよ」
「……そぉ」

 歴史に刻まれるほどに活躍した英雄達の行動とは思えない諸行を目の前にしつつ、呆れたような物言いの慎二の言葉にも少女は平然とそう言いきる。
 ああ、その胆力は認めてやってもいいかもしれない、とそっと慎二は思いつつも、とりあえずどうやってこの場を切り抜けようかと心の中で溜息をついた。

END


ブラウザバックで戻って下さい