BAMBINA



「――ということで、三日後の一時に鴨川でウチの木村とスパーお願いしますね」
「コチラこそよろしく」

 ある初春の昼下がり。練習生で賑わう川原ジムにはいた。鴨川会長に頼まれてのお使いだ。

「それにしても…先日の幕之内君の試合は凄かったですな。
 負けてしまったとはいえ、復帰戦が楽しみではないですか?」
「ええ。ようやく休養し終わって、本人も頑張っていますよ。私も楽しみにしてるんです」
「ああいう選手はトレーナ冥利に尽きるんでしょうね。
 それはそうとさん、今日はこれからお出かけで?」
「え、わかりますか?」

 指摘され、いかにも待ってましたとばかりに嬉しそうに言う

「判りますって。いつもはズボンはいているのに、珍しくスカートなんですから。よっぽどの朴念仁じゃなきゃ誰だって気付きますよ」
「あはは、それもそーですよねー」

 互いに朗らかに笑いあう。
 ここで宮田は初めてトレーニングの手を休め、会話している己の父との方を見た。
 いつものように長い黒髪をポニーテールにしているところは変わらないが、春先らしいミニのスカートがどこか新鮮だ。
 まァ確かにボクシングジムなんて汗臭いところには似つかわしくない服装ではある。

「実はこのあとですね――」
「こんちわー」
「あ、来た来た!」

 川原ジムの入り口に姿を現したのは、鴨川ジム所属J・ライト級日本ランカー木村達也その人であった。
 こちらも普段のトレーニング用の服装ではなく、こざっぱりとした格好であった。

「どーも。お久しぶりです、親父さん」
「おお、木村君。元気そうだな」

 木村も加わり三人で和気藹々と話しているのを横目に、宮田はトレーニングを再開した。パンチングボールをリズミカルに叩くが、耳はしっかりダンボだ。

「それじゃぁ迎えも来ましたんで、そろそろ帰りますね」
「ひょっとして…この後」
「ええ。ドライブに行くんですよ、二人でv」
「いやぁ、ツツジが見ごろだって言うんで、折角だから二人で行こうと」

 にへらっとしまりのない顔で木村が答える。

「それはそれは。いやぁ、仲のよろしいコトで」
「そーですかぁ? フツーですよぉ」

 宮田父の腕を照れ隠しなのかバシバシと叩く。頬を染めるその姿はまさに恋する乙女のそれだ。

「まァ、そういうわけなんで失礼しますよ。日の沈まないうちに見に行かないとまだまだ冷えますし」

 言って木村は一礼をして、と共に出てゆく。無論、がっしりと互いに腕を絡ませてだ。
 彼らを見送って暫らくの後。
 宮田父は息子をじっと見て、溜息を一つ落とした。

「……何時かこうなるとは思っていたが」
「…何がだよ」

 再び鍛錬の手を休め、律儀に父の独り言に相槌を打つ。
 むすっとした己のこの表情を見て、父は頭を振りながら言葉を放つ。

「無愛想な上に朴念仁じゃなぁ…。さんも愛想つかして、他の男に乗り換えるよな」
「……」
「大体、知り合ってから十年近く経つというのに、何の進展も無しってのが異常だし」
「……父さん」
さん、気立てもいいし可愛いから引く手数多だろうし、むしろ遅いくらいだったな」
「な・に・が! 言いたいんだ、父さん!!」

 物凄い目付きで、父を睨みつける息子。しかし、その視線をサラリと受け流しながら宮田父は言った。

「言ってやろうか?」
「…………やっぱ遠慮しとく」
「そうか」

 結局宮田は父に問いただせずに、もう一度黙々とパンチングボールを叩いていたのであった。



 そして三日後。約束の日である。
 その刻限よりも十分ほど早く、宮田は鴨川ジムに到着した。
 顔を出すなり、一歩の熱烈な歓迎を受け何時もの事ながらウンザリする。

「あらあら、相変わらず一歩君につれないわねェ宮田君」

 ニヤニヤと、何処か面白がるようなに宮田は渋面で答える。

「うるせぇ…。スパーさっさと始めるぞ」
「はいはい、ちょっと待っててね。達也さん、今奥で準備しているから」

 ――――達也さん?

 木村をファーストネームで呼ぶに、宮田は思わず眉をしかめた。

「よぉ、宮田! 今日はよろしく頼むぜ」
「……こちらこそ」

 心中は複雑なまま、宮田は生返事で木村に返す。
 その木村はというと、ヘッドギアをつけながらと話している。

「達也さん、頑張ってね!」
「おお、に心配かけさせねェ程度にやられるからよ」

 ――――呼び捨て!!?

 木村のヘタレな台詞よりも、彼女をごくごく自然に呼び捨てていた方が気になる宮田。
 そんな宮田のことなど眼中にもないのか、がイヤイヤをしながら木村に言う。

「そんな根性ナシな台詞言わないでよ、達也さん〜
 ここは一発くらいバーンとぉ! 宮田君にかます位の気持ちで!」
「んじゃぁ、宮田をダウンさせたらキスしてくれるかい?」

 にやっと悪戯っ子の様に笑い、木村はに囁くように言う。

「ええええーーっ!! 皆の前で!?」
「そ。そしたら俺頑張るんだけどなぁ」
「うう――――ん…… 頬っぺたなら、OK」

 頬を染め、やや恥ずかしげにそういう。その仕草は、誰しもが「可愛い」と思うそれだ。
 木村もやはり例に違わず、思いっきり嬉しそうな表情でグローブを胸の前で合わせる。

「よっしゃ! 気合入れるぜ!!」
「あ、クリーンヒットじゃなきゃ駄目だからね!!」
「おう! 何としでも一発入れてくらァ!」

 からの追加注文にもめげず、メチャクチャ気合の入った目で宮田を見据える。

 何としてでも、パンチを入れさせて堪るかっ! ジョルトで瞬殺してやる!!

 負けず劣らず気合を胸の中で滾らせ、宮田も木村を睨む。

「んじゃ3ラウンド、3ノックダウン制でいいな。はじめるぜ」

 レフェリー役の鷹村が双方に目配せをする。二人とも軽く頷き、構える。

「はじめっ!!」

 カーン!
 鷹村の宣言と共に、両者同時にニュートラルコーナーから飛び出した。



 さて結果であるが。

 当然のことながら、宮田の勝利であった。
 二ラウンド・一分三十五秒。決まり手はジョルトカウンター。
 一ラウンド目はそれなりに渡り合ってきたのだが、インターバルでの木村サイド――がトレーナー役だ――での二人のいちゃつきっぷりに、宮田がキレた。
 二ラウンド目は宮田の猛攻から始まり、裁ききれなくなった木村が迂闊に出したパンチに宮田が渾身の力でジョルトを放った。

 はっきり言って、大人気ないことこの上ない。

 ちなみに、残念ながら木村のクリーンヒットは一回もなかった。

「…達也さん、大丈夫? 宮田君、思いっきり打ち込んでたけど」
「――何とか生きてはいるぜ。まだ頭ん中グッチャグチャだけどな。
 それにしてもスパーでジョルトまで出すかぁ、フツー」

 グッタリとうな垂れる木村に、心配げにが介抱している。双方共に俯き加減であるので、その表情までは良く伺えないが。
 それを反対側のコーナーから見つめている宮田。リングの外にいる自らのサポートを申し出た一歩に問い掛ける。

「オイ、幕之内。あの二人、何時からああなんだ?」
「み、宮田君… なんだか何時にも増して目が鋭いような――」
「いいからさっさと答えろ」
「う、うんっ!!」

 今世紀最大級に極悪な目付きで、一歩に問う宮田。今にも締め上げんばかりの雰囲気だ。
 それに思いっきり気圧されながら、一歩はぼそぼそと答える。

「僕も暫らく療養してたから、良くわからないんだけど…
 少なくとも僕がジムに復帰してからはあんな感じだよ」
「…お前、何時からだ? ジムに復帰したの」
「ええっと… 大体五日前」
「そうか」

 指折り数えて確認する一歩。宮田はそれに心有らずといった調子で返事を返した。

 海外に行く前とか、この間の電話とか… 結構脈あるって思ってたんだけどな。俺の思い込みだったのか?

 が鴨川会長に引き取られて以来の付き合いの中で、彼女の周辺に男と影があったことはなかった。
 例えそう言った連中がいたとしても、大概の場合鷹村や宮田が一睨みすれば尻尾を巻いて逃げ帰る様な連中ばかりだった。
 幼馴染としてのポジションが居心地良かったせいもあるのだが、今更本人に「お前が好きだ」言うのもどうにも気恥ずかしい宮田だったが。
 ここへ来て、まさかのダークホースだ。

「何だ何だ宮田! お前勝ったってのに、何時にも増して暗いな!!」

 豪快に笑いながら、鷹村が宮田に声をかける。

「別に…」

 言って宮田は溜息を一つつく。確かに、いつもより覇気がない。

「ちょっとペース配分間違えて体力消耗してるだけですよ」
「ほぉう、そうか」

 にやにやとした表情で、鷹村は宮田を見る。
 いつもならばここで何か一言言ってやるのだが、どうにも今日はそういう気すら起きない。

「ああ、そうだよ」

 ついでにもう一度大きく息を吐き、宮田は答える。
 自分でもわからないが、無性にむしゃくしゃしている。

「くっくっくっくっ……」

 不意に、リングの脇でその様子を見物していた青木が声を漏らした。
 するとそれに呼応するかのように鷹村も顔をゆがめた。そう、笑いを堪えるかのように。

「ど、どーしたんですか二人とも!?」

 一歩がそう問いかけた、まさにその瞬間――

『ぶわっはっはっはっはっはっ!!!』

 盛大に、鷹村と青木の二人は笑い出した。

「ああっ! 二人とももう少し我慢しててよ!」
「わ、わりぃ、ちゃん… でももー我慢できねェ!」
「まさかここまでとは思わなかったからよぉ!!」

 非難しながらも、何処か楽しげなに、腹を捩らせんばかりの勢いで笑い転げる二人。
 木村のほうもコーナーポストで肩を震わせている。どうやらコチラも笑っているようだ。
 とりあえず、宮田は手近にいた一歩を問いただすことにした。

「どぉいう事だ?」
「いや、あの、その――僕にもさっぱり…」

 怯えながらも懸命に答える一歩。
 それを見て、埒があかないと判断した宮田はすたすたとリングを歩き、対岸のへと向かう。ちなみに言うまでもないがも爆笑中だ。
 そんな彼女にびすっとグローブでチョップを入れて、自分へと宮田は振り向かせた。

「――説明してもらおうか」
「…あらヤダ宮田君、端正な顔が怒っちゃ台無しよv」
「いーからさっさと答えろ」

 ご機嫌を取るかのように、にっこりと笑いながら言うに、宮田は容赦なくもう一度チョップを入れる。
 二度叩かれた己の頭を擦りながら、はこういった。

「今日は何の日でしょう?」
「――?」

 唐突な彼女の問いに、宮田は疑問符を浮かべる。
 そんな宮田に、はびしぃっと指を突きつけて高らかに宣言した。

「今日はエイプリルフール!」
「――!!」

 そう。今日は確かに四月一日。世間様一般では割とメジャーなイベント、『エイプリルフール』だ。
 それを聞いた宮田は、電流が身体を走りぬけるような感覚を味わった。
 つまり、ようするに――

「俺は騙しの対象か?」
「ビンゴぉっ!」

 妙にテンション高くが答える。ぐっと親指を立てて、超ご機嫌だ。

「こないだっから私宮田君に負けっぱなしだったからね。ココは一発『ぎゃふん』とさせたかったの♪
 企画立案はあたし、協力者木村さん以下三名。仕込みは五日前からって寸法よ」

 木村の呼び方が、いつもの苗字呼びになっていることに少し安堵しながらも、宮田はその彼女の台詞に引っかかりを感じた。

「木村さん、青木さん、鷹村さんは判るとして…後一人は誰だよ」

 ギロリと一歩を睨みつけるが、当の本人は青ざめた顔でプルプルと首を振る。どうやら一歩ではないらしい。
 ふふふとは得意げに笑いながら、もう一人の協力者の名前を言う。

「宮田君のお父さんにも協力していただきましたv」
「……父さん」

 全力で脱力しながら、心の淵で己の父を思い起こす。自分の父親はこんな阿呆な企みに手を貸すような愉快な性格をしていたのかと。

「いやー、でもイキナリの木村さんのアドリブにはビックリさせられましたよ〜」
「ああ、頬っぺたにキスか?」
「そうそう、それです! 打ち合わせにはなかったからメチャクチャ焦りましたよ」
「とっさに思ってな。宮田の野郎、妙に鋭いところあるからこういうアドリブ入れたほうが臨場感増すだろうと考えてさ」

 してやったりといった顔で、悪戯っぽくウィンクをしながら木村は答える。そんな木村には「グッジョブ!」と言って彼と手を高らかに打ち鳴らす。
 クルリと方向を転換して宮田へと向き直り、は実に爽やかにこう言った。

「そんなワケで『第一回・宮田君をぎゃふんと言わせようプロジェクト』は目出度く成功ってコトで。
 どう? That's Suprise?」
「あー… サプライズサプライズ。驚いた」
「あ、何よそのやっつけ仕事な返事は!」
「実際そうなんだよ。とゆーか『第一回』って何なんだ。
 まさかこれからもこんなアホなことやるのか?」
「まぁそこはこうご期待ってコトで」
「心底御免こうむる」

 一言残し、宮田はリングを降りる。乱暴にグローブを脱ぐと、自分のスポーツバックにしまう。
 てきぱきと帰り支度を整えると「それじゃ」と言ってさっさとジムを出て行ってしまった。

「…宮田君、怒ってる?」
「そりゃぁ、怒りますよ普通」

 一歩が溜息をついて、の一言に突っ込みを入れる。

「俺フォロー入れてくるぜ」

 言って木村がヘッドギアとグローブを脱ぎ捨て、宮田の後を追いジムを出る。

「いってらっしゃーい」

 ひらひらと能天気に手を振りながら、が見送る。宮田に一矢報いたことで、ご機嫌なのかは物凄い笑顔だ。

「いやぁ、木村さん優しいねェ。フォローまで入れるなんて」
「…ま、気持ちはわからなくはねェけどよ」
「俺としちゃあのまんまほっといた方が面白そうなんだがな」
「私も鷹兄にさんせーい。どうせ仏頂面の宮田君だし?
 それに散々私だって煮え湯飲まされてたんだから、これくらいの報いはとーぜん受けて然るべきよ!」

 ぐっと拳を握り力説するに、青木と鷹村の両名はうんうんと頷く。
 その様子を見て、一歩は小悪魔どころか悪魔が三人いるかのような錯覚に陥ったのだった。



「待てよ、宮田!」
「……なんですか、木村さん」

 ジムから少しばかり離れた公園の前で、木村は宮田に追いつけた。
 後方から声をかけられ、仕方無しに宮田は立ち止まる。その表情は当然といえば当然だが憮然としたものである。

「ちょっと暇あるか? 出来れば話をしてぇんだけどよ」
「…別に俺はないけど?」
「――ちゃんに関するって事でもか?」
「――――わかった」

 出された名前に反応してか、宮田は木村の誘いを承諾する。くいとしゃくる様に木村が公園の中へ促すのに倣い、ゆっくりと歩みを進めた。
 やがて木村はある遊具の前で足を止めた。一般的な公園ならば十中八九はあるであろう、ブランコの前だ。
 ブランコの前の安全柵に腰を落とし、木村は自分の背にあるそれを示しながら言った。

「俺な…ココでちゃんを口説いたんだよ」
「――!?」

 唐突な木村の言葉に、宮田の身体に戦慄が走る。
 半ば仰天している宮田を横目に、木村はなおも言葉を続ける。

「ありゃチャンピオンカーニバル終わってすぐ…お前がちゃんに頼み事してて、それを取りに来た日の夜だったな。
 ひょんなことからちゃんとココで二人っきりになってな。お前口実にしてちゃんに口説き文句いったんだよ。
 …まァ、その時は冗談ってことにしたんだけどな。
 真っ赤になって何も言えないでいるちゃん、メチャクチャ可愛かったぜ」
「……なんでそんなこと俺に言うんですか?」

 珍しく、何処か苛立ちを含んだ宮田の物言いに、木村は思わず失笑した。

「決まってるだろ。俺だってちゃんを好きだからさ」
「だから何でそういう話を俺に――」
「お前だってそうなんだろ? バレバレだ」

 くつくつと笑う木村に、宮田は何も言い返せなかった。
 今日何度目かも知れぬ盛大な溜息をつく。

「俺はな、ある意味感謝してるんだぜ?
 多分、お前がちゃんにちょっかいかけてなきゃ自分のこの気持ちに気付くことも…なかっただろうしな」
「…気付いたのはいつ頃ですか?」

 宮田の問いに木村はやや自嘲気味に答えた。

「…お前が海外行った直後ぐらいだな。
 あの頃のちゃん、えらく元気がなくってな。それ見てた俺も、なーんかこの辺がモヤモヤしてたんだよ」

 言いながらとんとんと自らの心臓辺りを叩く。

「んで丁度ちゃんの誘いに乗って、二人で浜辺にドライブに行った時に、お前からの連絡だ。
 その電話でいっぺんに元気になったちゃん見て…自覚した」
「そうですか…」
「宮田、お前の方はどうなんだよ」
「――俺は…多分もっとずっと前からですよ。もう好きになったきっかけを忘れるくらい昔から――ひょっとしたらまだ初恋のままなのかもしれない」

 遠い昔の記憶を探るように、突き抜けるような蒼い空に視線を飛ばしながらボンヤリと宮田は答えた。

「自分でも判らないですけどね。あんなに喧しいし、口も悪いし」
「ついでに悪戯好きで悪乗りもすぐするけどな」
「でも意外に人の事見ていて――」
「欲しい時に欲しい言葉とか言ってくれて――」

 そこまで言って、二人は思わず顔を見合わせた。そして、同時に情けなく笑った。

「こりゃお互い――」
「厄介なものに惚れたモンですね」
「それも心底な」

 諦めるように息を付いて木村は立ち上がり、真剣な眼差しで宮田を睨んだ。

「そういうワケで、俺はちゃんをお前に渡す気なんか更々ないって言うことだ」
「…それはコチラも同じことですよ」
「ああいうタイプはそれなりのシチュエーションじゃねェと、本気にとらねぇぞ。
 だから、お互いまだまだスタートラインってところだな」
「十年の歳月は結構大きいんじゃないですか?」
「昔はそうかも知れねェけどな。今は俺のほうがちゃんに近い位置にいる。ジム移ったのは失敗だったかもな」

 冗談めかした口調で木村は言う。しかしその目は決して笑ってはいない。
 木村の言葉に宮田はわずかに眉をしかめ、すぅっと目を細めた。

「負けませんからね」
「望むところだ」



 穏やかな小春日和の昼下がり。
 静かに、だが激しく――その戦いの舞台は開演を迎えたのであった。
 勝者を知るものは、誰もいない…

END


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