鍵を無くした。



 失物注意



「……ない」

 ポケットをひっくり返す。バックの中身を全て確認する。
 入念に、二度。だがやはりない。

 次に今日の外出先での行動に思いを馳せる。
 使った乗り物はバス・電車。行った先は雑貨屋と喫茶店と本屋と…
 片っ端から携帯で問い合わせてみるが、鍵の落し物はないとのこと。

 最寄の交番でも同じことを言われた。
 何かあったら連絡するといわれはしたが、出てくる保証もない。

 そして合鍵は部屋の中にしかない。
 更に運の悪いことに大家は生憎と旅行中で、明日にならないと帰ってこない。

 時間は夕刻。日も傾きかけ、これからはどんどん暗く・寒くなる。
 いくら春に片足を突っ込んだ季節とはいえ、流石に夜はまだまだ冷える。
 
 さて、どうしよう?

 彼女は少しばかり途方にくれた。



 ⇒駅までの道のりを確かめに行く

 ⇒諦めて誰かのうちへ転がり込む